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旅行期間:8/23/2005-9/2/2005(11日間)
移動手段:鈍行列車(JR)+長距離バス





8/26(三日目):
仙台 (宮城)→一ノ関 (岩手)→気仙沼 (宮城)→盛 (岩手)→釜石 (岩手)→宮古 (岩手)→盛岡(岩手)

(赤字は観光した場所。それ以外は乗り換え地点。)

今日は仙台を発つ日だ。さらに北へ向かい、宮沢賢治がイーハトーブと呼んだ岩手県へ入る。花巻で宮沢賢治記念館などを宮沢賢治ゆかりの地を見て周り、さらに北の盛岡へ進み、石川啄木などのゆかりの地を求める。東北本線を北へまっすぐ進む予定ということだ。


朝は早い。8時2分の東北本線仙台発一ノ関行きの電車に乗るのだ。彼女の化粧の時間はあいかわらず長い。待っている時間はこれまた妙に長く感じる。たぶん、この先なれることはないだろう。その時間を含めて、早めに起きることにしないと。僕は学習した。7時30分ごろホテルをチェックアウトし、仙台駅へ向かう。心配していた台風は太平洋へ大きく反れ、仙台の空は青空が覆っていた。早めに駅に着いた。今回はホテルで朝食を食べなかったので、途中で食べれるように、仙台駅で駅弁を買いたかった。駅弁販売コーナーへ行き、狙っていた牛タン弁当を買う。この牛タン弁当、以前テレビの何かの特集で、そのすごさを知っていたが、なんとある仕掛けで弁当を温めてしまうのだ。牛タンは一度火を通して冷めてしまうと、かなり硬いものになってしまう。やわらかい牛タンを温かいご飯の上に乗せて食べてもらいたいと、この弁当の考案者が知恵を振り絞って作り出した弁当なのだ。とにかく、僕はその弁当をどうしても試してみたかった。


その弁当をいれたビニール袋を手に、電車に乗り込む。その弁当を手に入れたうれしさが顔に出ていたらしい。「うれしいんやろ」。彼女に指摘された。一ノ関には9時39分に着く予定で1時間40分ほど電車に揺られることになる。その電車の中で僕は考えていた。このまま東北本線でまっすぐ北に上っていいものだろうか。もっとおもしろいことが他のルートに隠れているかもしれない。インターネットで時刻検索をし、予定を立て、その予定がプリントしてある白い紙(この旅で、僕らは自然と白紙と呼ぶようになる)と時刻表、路線図を何度も何度も交互ににらみ続け、予定されているルートに打って変わる面白そうなルートを思いついた。それは一ノ関から大船渡線に乗り換え、一路太平洋へ向かう。気仙沼や盛を経由し、そしてリアス式海岸と呼ばれる入り組んだ海岸を眺めながら走る三陸鉄道にのって太平洋沿いを北へ向かい釜石まで行く。そしてまた海岸沿いに進み、宮古で乗り換え、山田線で再び内陸部へ入り、盛岡へ着くというもの。


予定を変更する際に考慮しなければいけないことが3つある。一つは、今夜のホテルが盛岡に予約してあるという事実。つまり、夜には盛岡に着かなければならない。二つは、今日予定していた宮沢賢治記念館がある花巻を明日にずらさなければならないこと。3つは、盛岡後の予定が、盛岡から山田線で太平洋へ出て、宮古で乗り換え(宮古で一泊)、北リアス式海岸沿いを走り、八戸へ行くこと。これらの考慮事項をすべて解決していかなければならない。まず、一つ目の、夜は盛岡に行かなくてはならないというのは、時刻表で予定を組んでみたところ、夜9時には盛岡につけることが分かった。2つ目の、花巻観光をどうするかという問題は、花巻観光を明日の午前中に入れ込むことが可能と考え、解決。3つ目の、太平洋沿いから八戸へ向かうということに関しては、この針路変更で南リアス式海岸を走るのならば、わざわざ来たリアス式海岸をとおることもなく、盛岡からは直接八戸へ向かう、IGRいわて銀河鉄道乗ればよいじゃないか、という結論に至った。


彼女と相談した結果、予定を変更することにした。となると、一ノ関でかなりの待ち時間が生まれる。予定を変えなければ、数分の乗り換え時間ですんだのだが、大船渡線に乗り換えるとなると、1時間40分も足止めを食らうことになる。まぁ、よいか。仙台牛タン弁当でも食べながらのんびりしようじゃないか。一ノ関に9時39分に着き、一度改札を出て、待合のベンチに荷物をおろし、自分たちも腰をかける。ごく普通の地方都市の駅だ。少しうろうろしてから、駅弁を食うことにした。その弁当はかなり底がある。その側面からちょろっとでたタコ糸のようなものがこの弁当の特徴である加熱をスタートさせる貴重なもの。説明によると、まず中からしょうゆやとろろなどの付属品を除いてからふたを閉め、勢いよくその紐を抜く。するとすぐに加熱が始まり、7,8分後には温かい牛タン弁当が出来上がるという。注意書きには「やけどをしないように」とある。そんなに熱くなるのか。


糸を引いてみた。見る見るうちにその弁当の箱はあつくなり、手で持ってることが出来なくなる。「あちぃ、あちぃ」といいながら、その弁当をベンチの隣の席へそっと置く。箱のふたはその熱によって焦げ、隙間からは蒸気が噴出している。かなりの発熱剤が仕込まれているらしい。その7,8分が待ちきれず、また駅構内をぶらつく。あちこちにおかれている、観光情報のチラシに目をやったり、お土産屋で前沢牛の値段を見てびっくりしたり、どんな駅弁があるのか物色したり。また、雑誌コーナーでよく読んでいる雑誌の最新号をぱらぱら見てみる。そろそろ7.8分かなと、ベンチに戻ると、彼女が「弁当がでっきあっがり~ってゆうたで」っていった。「まじで?!すっげー聞きたかったわー!」。まじで悔しい。まじで聞きたかった。そんな機能があったなんて、説明に書いておけよ!とつい一番あたるべきでない相手を恨んでみたりする。すると彼女が「うそやで」と満面の笑みを浮かべて一言ボソッと言った。笑い転げる彼女。悔しくて悔しくてたまらない僕。まんまと彼女の悪知恵にはめられた。あほみたいだ。弁当が声で出来上がりと知らせるまで凝っているわけがない。


それでも、牛タン弁当はうまかった。牛タンを弁当でここまでやわらかく提供することが出来るのか、とそのおいしさに対する感動と、誰だかわからないがその仕組みを考案した人に対する敬意で分けわかんなくなっていた。とにかく、あの弁当はすごい。食べ終わった後に、弁当の底を調べてみた。そこには破れたビニールにつつまれた物体がある。たぶん、あの紐を引っ張ることによってこの袋が破れ、中の物体が空気に触れて発熱反応を起こすのだろう。その物体の成分については、化学が苦手な僕にとっては考える必要がないことだ。とにかく、その仕組みを考え出したことがすごい。


電光掲示板に気になる文字がある。11時26分発「義経北行伝説1号」。なんだこれは。早速時刻表で調べてみる。どうやら、夏季限定の臨時列車で、仙台を9時47分に出発して、一ノ関、平泉、花巻を経て、釜石線に移り、終点を釜石とする、義経が北へ逃げていった足取りを追うという特別企画列車であるらしい。


乗りたい。


20分ごろその緑色の電車は一ノ関一番ホームにやってきた。中を覗くと、豪華なシートで、お座席もある。乗りたい。しかも運のいいことに、その列車は快速列車で青春18切符でも乗れるじゃないか!これは乗るしかない!しかもこの時期は金土休日限定運行じゃないか。なんて運がいいんだ!と、盛り上がってる僕を尻目に彼女は、「乗らない」と決断を下す。というのも、それに乗ってしまえば、せっかくのリアス式海岸を多くの部分見損ねてしまうから。そして、大船渡線を行けば、気仙沼や盛という今後二度と行かないだろう町にも行くことが出来る。そう考えると、一時の欲に駆られて行動するよりは、計画通りに行こうと言うのだ。了解。。


11時25分発の大船渡線盛行きの列車に乗り込む。はじめ、のんびりとその山沿いを走る列車に揺られながら本を読んでいた。途中で、おじいちゃんおばあちゃんツアー御一行が乗り込んできた。それは、猊鼻渓という駅からだった。猊鼻渓は、砂鉄川の中流にある景勝地。電車からその一角でもいいから見えるかなと期待したが、全くもって無理だった。そのおじいちゃんのばあちゃんらはそこを見てきたのだろう。ツアーの引率は若い男性だった。途中、お茶を配ったり、弁当を配ったり、おじいちゃんの話し相手になったりと、シンプルだけど、気を使う職業なだけに、大変そうであった。その御一行でおどろいたことは、おじいちゃんたちはデジタルカメラを駆使していたこと。完全に使いこなしている。また、話のネタが、あのパソコンのCPUがどうのこうのでね、OSがXPだからどうのこうので、と全く最先端な話をしておられる。こんなおじいちゃんたちであれば、孫たちとEメールで連絡しあったり写真を送ったり、もしかしたら、ネットでテレビ電話なんかしているのかもしれない。これからはそういう時代なのだ。このおじいちゃんおばあちゃんらとは、結局宮古まで一緒になることになる。


気仙沼まで行くと、ついに太平洋が開け、リアス式と呼ばれる入り組んだ湾がつぎつぎと現れる。盛から三陸鉄道という第3セクターの鉄道会社路線となる。本当は青春18切符では乗れないのだけれど、改札のおばちゃんも気づかなかったので(もしくわおじいちゃんたちと同じ団体かと思ったのかもしれない)、そのままにしておいた。三陸鉄道はどうやらかなり経営がきついようで、車内いたるところで三陸鉄道を守ろうというチラシがあった。リアス式海岸という景色沿いに走る鉄道なのだけれど、どうも景色がよく見えない。トンネルや山の中を走ることもおおく、旅行者としては不満が残る路線だ。もう少し、線路沿いの延びた草木を整備してくれると、景色も見やすくなっていいのになぁ。


釜石まで来た。ここで、乗り換え時間が長いので、昼食をとることにした。駅の隣に釜石の魚市場があるらしく、いってみた。そこでおいしいご飯でもいただければと思って。しかし、時間が3時近くだったため、昼食時間を過ぎており、どのレストランもあいていなかった。市場には新鮮な魚介類がならんでいた。となりの、新しい建物にいってみたのだけれど、こちらはもっと期待はずれだ。中には、小さなショップが立ち並んでいたが、客もすくなく、全くの寂しい場所となっていた。むなしく動くエスカレーターが痛い。2階は集いの場のような広場になっていたが、人はほぼ0。見た感じ公共事業で立てられたものみたいだが、どう考えても税金の無駄遣いに見える。結局、新鮮な魚介類を使ったおいしいご当地料理はあきらめ、駅舎の2階のありきたりなレストランで中華飯定食をいただく。彼女は和風ハンバーグ定食だ。庶民的な味のラーメンがどこか懐かしく感じる。


釜石を14時28分に出発し、宮古まで行く。この路線はすでにJRで山田線という。この路線も、海岸沿いを走る。海を見ながらの旅はどこか透き通る気持ちになってよい。宮古には17時についた。1時間ほどの待ち時間がある。このときに、盛岡の今日止まることになっているホテルに電話を入れる。予定ではチェックインはこの17時になっていたからだ。夜の9時ごろになると伝え、電話を切る。宮古は予想以上に「町」だった。といっても、駅前はちょっとした店が並ぶ程度だが。ウミネコと浄土ヶ浜が有名で、駅前にはその銅像がある。18時11分に盛岡行きの列車に乗る。あとは一本でいける。20時41分に盛岡に着く予定だ。この電車はひたすら山間部を走り、しかも真っ暗の中ごとごとと大きな音を立てて、時折警笛を鳴らしながら進む。宮古から中高生らが乗り込んでいたが、止まる駅駅で、彼らは闇の中へ消えていく。こんなところで生活しているんだ、と驚きと感心とが入り混じった気持ちになる。外の景色も拝めなくなった僕らはひたすら小説を読み続ける。僕は「海辺のカフカ」の下巻を読んでいる。かなり面白く、次々とページがすすむ。彼女にも勧め、彼女は上巻を読み始めた。話の中での非現実的なストーリーと、電車に揺られている僕らの現実とを交互に確認するかのように、また、暗闇しかなく、窓に反射して写る車内を意味深に眺めてみたりする。なぞが多い。海辺のカフカというストーリーには解決されずに、説明も去れずに残されるなぞの部分があまりにも多いのだ。そのなぞの部分が時折僕の頭の中でめまぐるしく回り、疲れた僕は窓を見上げるのだ。


気づいたときには、また人が少しずつ増えていた。盛岡に近くなった証拠だ。盛岡へはあと5分。山岸、上盛岡とすすみ、やっと予定時刻どおり盛岡へついた。大きな駅だ。東北新幹線が通っているが、そのほかは岐阜のような雰囲気がある。またその規模も、駅前も、岐阜のような雰囲気をかもし出しており、なんとなく居心地がいい。それが盛岡の第一印象だった。盛岡で予約していたホテルは、駅の目の前にあった。これは楽でいい。このホテルに2泊することにした。明日もここに泊まり、その次の朝に十和田湖へ向かおう。1泊しか予約してなかったが、同じ特別料金で連泊できることになった。部屋はさすが駅前のビジネスホテルというだけ狭い。しかし、ベッドとシャワーさえあれば、リフレッシュでき十分だ。


おなかがすいた。釜石駅の食事以来、おなかに物を入れていない。早速、夜の街に出た。盛岡では盛岡3大麺といわれるものがあり、一つは有名なわんこそば、そして、じゃじゃ麺、そして、冷麺と3つの麺料理が有名だそうだ。今日は、今まで耳にしたことがなかった、じゃじゃ麺というものにトライしてみることにした。ちょうど、ホテルから道路を挟んだ向かいに子じゃれたじゃじゃ麺のお店「HOT JAJA」があったので、はいってみた。そこで、じゃじゃ麺と、おつまみと、ご当地ビールをいただく。じゃじゃ麺、韓国のジャージャー麺のようなものかなと想像はしていたが、やっぱりすこし違うものだった。硬めのうどんのような麺に、肉味噌をのせ、あとはラー油や酢で自分で味付けをしていく。トッピングはきゅうりとしょうがなどすごくシンプルだ。自分なりの味になったら、どんどん食べていき、残り少なくなったら、卵を一つ割りいれ、かき混ぜる。そして、「チータン、お願い」と頼むと、スープを入れてくれる。そして、残りの麺と卵が入ったスープになり、それも飲み干す。なかなかおいしい一品でした。地ビールのBAEREN BEERもいただいた。そして生ビールもおかわりして、気分はいい。


お店を出て、ホテルまで戻る。どことなく、居心地がいい空気が流れる。盛岡、いい町だなぁ。



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