旅行期間:8/23/2005-9/2/2005(11日間) 移動手段:鈍行列車(JR)+長距離バス | ||
8/31(八日目): 男鹿温泉郷 (秋田)→男鹿半島(秋田)→羽立(秋田)→ 秋田(秋田)→酒田(山形)→新発田(新潟)→新潟 (新潟) (赤字は観光した場所。それ以外は乗り換え地点。) |
いつの間にか寝てしまった昨夜から夜が明け、目が覚めたのは6時ごろだった。朝風呂というより、朝温泉か。早速行きますか。彼女と共に浴場へ移動する。それぞれ、男湯、女湯へわかれ、それぞれが元湯を利用している温泉を満喫することに。早朝ということもあり、浴場にいたのは3人ほどだった。脱衣場には、その温泉の歴史や効能を記されたポスターのようなものがはってあり、読みながら服を脱ぐ。朝日がまぶしい浴場に入り、寝ぼけた体に熱い湯をかけ気分をシャキっとさせる。洗い場の反対側には湯船があり、源泉からくみ上げられる温泉が勢いよく噴出している。沈殿物も多く、それが凝固して噴出す先に山を作っている。お湯は泥が混じった黄色をしており、硫黄の匂いもする。体を洗い終え、その湯船に身を浸す。そのころには他のお客はすでに上がっており、浴場には僕ひとりとなった。湯船の中で柔軟をする。日本海を見ながら、青く晴れ渡る空を見ながらの朝湯は最高だ。
よし、露天風呂へ行こう。浴場から外の階段へでて、降りていく。そこには岩で作られた露天風呂がある。浴場の湯船と同じように、源泉からつながるパイプから勢い良く元湯が吹き出ている。半分蒸気で、半分沈殿物をまぜたお湯である。さすがに、露天風呂は木の塀で囲われており、外の景色を眺めることはできないが、外気の冷たさとお湯の温かさのギャップが気持ちよい。
脱衣場に戻り、服を着ていると、携帯電話が鳴る。彼女からだ。ちょうど彼女も上がったようだ。一度部屋に戻り、身の回りを整えてから、今度は広間へ朝食を食べに行った。ゆっくりしすぎたのか、他の客は誰もいなく、食べている間、仲居さんらが、食べ終わるのを待っている感じだった。そんな状況でさすがに「おかわり」などと言えず、ある分だけのゴハンを食べて、はやめに切り上げた。
今日は、10時から2時間の男鹿半島観光をする。これは昨夜、旅館の部屋で発見した、男鹿半島を巡るコースだ。タクシーの運転手が、男鹿の名所を2時間で周ってくれるというものだ。入道岬からはじまり、なまはげ伝承館、八望台などに連れて行ってくれ、一人2500円だ。ちょうど、男鹿半島をどう観光しようか迷っていた僕らに最適なプランだった。また10時から2時間で、ちょうど男鹿を出なければならない時刻に間に合うところがいい。なので、昨日の夕食の際に、フロントに電話して、この予約をしていたのだ。
10時少し前に部屋を出て、チェックアウトをする。そとにはすでにタクシーが待っていてくれてる。トランクに荷物を入れ、さっそく男鹿観光を始める。まず向かうのは、入道岬だ。男鹿半島最北端の岬で、日本海を見渡せる絶景ポイント。今日はほんと天気に恵まれた。真っ青の空だ。すがすがしい。タクシーを降りて、岬の先のほうまで歩いていく。運転手さんに10分ほどしか時間がないといわれていたので、ゆっくりは出来なかったが、それでもその美しい景色は満喫できた。
次に向かうは、男鹿真山伝承館だ。男鹿真山神社にあるこの伝承館では、生のなまはげ体験ができるのだ。男鹿はなまはげの発祥の地であり、現在もその風習は守り受け継がれている。他の地方では見られないこの風習を生で体験できるのだ。はじめに、なまはげの由来やなまはげのしきたりやルールなどの説明を聞き、その後、実際に本物のなまはげが登場する。このなまはげの実演がすさまじくすさまじい。とびらを勢い良くたたき、おもいっきりとびらを開け、そこで雄たけびをあげながらしこを踏む。そして、部屋の中にすさまじい迫力ではいりこみ、部屋中を練り歩く。「悪い奴はいないかー!」といいながら、どすんどすんと歩く。それから、家の主と酒を交わしながら、その年の作物や身内の話をする。さいごにまた怒号を上げながら部屋を練り歩く。そして、玄関でふたたびしこを踏んで、帰っていく。彼らが身につけていたわらが部屋に落ちていると、それを大事にとっておけば幸せになれるという。彼女はすかさずわらを数本広い、大事そうにノートにはさんでいた。
その後、隣にあるなまはげ館でなまはげの勉強をする。男鹿半島や他の地域でもなまはげの風習はあるのだが、地域によってその色形は全く異なる。本当におそろしい姿をしたものもあれば、愉快な顔をしたものもある。50以上の本物のなまはげが展示してあったり、その伝説などの展示物もある。時間が押しているので、ひととおり見て周り、お土産を買い、再びタクシーに乗り込む。その道を下る途中、万体地蔵を見せてくれるといって、車を止めて、小さな神社へ連れて行ってくれた。そこには、小さな木彫りの地蔵が壁中、天井一面に組まれている。そして、そこで見つけたのが、コウモリだった。よく空を飛ぶコウモリは見たことはあるのだが、本当に天井からまっさかさまに止まっているコウモリをみるのは初めてだった。タクシーの運転手もはじめてみたと、びっくりしていた。
さぁ、時間もせまっている。最後に連れて行ってくれたのが、八望台だった。一の潟、二の潟、三の潟などを見ることが出来、また日本海も広がる光景をみられる展望台だ。夕日の時刻にこれば、ほんとに綺麗な景色を見ることができるんだろうなぁ。まぁ、彼女はそんな景色よりも、そこに住み着いている野良犬に夢中だったが。。。
さぁ、時間はすでに2時間になっている。あとは駅まで送ってもらうだけだ。駅は男鹿線の最終駅の男鹿駅よりも、一つ手前の羽立駅で降ろしてもらった。そして、二人で5000円払って、タクシーのおっちゃんと別れた。電車が来るまで10分ほどあり、そこでジュースを買って、羽立駅のスタンプを押して、荷物を整理して。そういえば、旅の開始から集めだしたスタンプもだいぶ多くなってきた。行く先々、着く駅々でスタンプを押しまくっている。旅が終わり、またこのノートを見れば、旅の思い出が浮かんでくるのだろうか。青森駅で、いったん改札を通ったのに、スタンプを押してないことに気づき、駅員さんに頼んで、スタンプだけ押しに戻ったこともある。そんな小さな思い出も、旅の中では鮮やかな色を放つ。
12時半過ぎ、羽立で電車に乗り、1時間かけて秋田まで出た。秋田駅に着いたのは13時28分。今日は、ここから一気に南へ下る。新潟まで目指すのだ。ここから6時間以上電車に乗り続け21時に新潟に着く予定だ。秋田を出発するのは14時47分。1時間半近く時間があるので、いったん駅の外に出て、秋田駅周辺でも散策することにした。コインロッカーに重いボストンバックを詰め込み、身軽にしてから秋田駅の外に出た。駅前のアーケード街は綺麗に整備されており、印象はよい。二人ともおなかがすいていることに気づく。しょうがない、デパートのレストラン街に入ることにした。そこで雰囲気がよさそうなうどん屋へはいる。何気なくそこで食事していたのだが、ガイドブックをぺらぺらめくっている際に、なかなかの有名店という事に気づいた。七代佐藤養助という稲庭うどんのお店だ。すきっぱらには何でもうまいと言えば失礼かもしれないが、本当においしかった。ゆっくりしすぎたのか、なんと時間は14時40分にさしかかろうとしている。慌てて店を出て、コインロッカーで荷物を引っ張り出し、急いでホームに駆け下りる。酒田行きの電車はすでにその出発の時刻をじっと待っている。乗客はまばらにいる。他人との距離を一定に保ちながら座るその光景はなんとも面白い。
ひたすら下す。人には、南へは下る、北には上るという感覚を自然と持っている。南下とは言うが、南上とは言わない。これもおもしろいことだなぁと、とりとめもない事を考えながら、車窓の外を見る。酒田には16時56分に着く。そして、17時21分初の新発田行きの電車に乗り換える。夕刻ということもあり、学校帰りの高校生が多く、車内は騒がしい。酒田も一つの地方都市だが、そこの学校へ田舎から通っている生徒は相当の数なんだろう。酒田を出て、1時間以上も離れた、駅周辺には辛うじて街灯が一本立っているような駅で降りていく学生も多い。大変な学校生活だ。僕が家から自転車で15分ほどの高校へ通っていたことから考えれば、ありえない通学距離だ。
羽越本線は日本海沿いに走る景色が綺麗な路線だ。常に右側には日本海が広がっている。夕刻となればオレンジに染まる空と太陽を見ながら、物思いにふけることもある。のんびりとした時間が過ぎる。手にしている本は「夏の庭」だ。わんぱくの小学生グループと近所のじじぃの間に芽生える友情の物語だ。すがすがしいさもあり、寂しさもある作品だ。話が短いので一日で読み終えることができる。特に、重いテーマもなく、深い作品でもないので、さくさくと読める。最後のほうでは涙を誘う場面もあるが、やはり主人公たちが小学生というのもあり、すがすがしさが残る作品だ。
新発田に20時14分に到着し、20時17分の新潟行きの電車に乗り換える。新潟には20時55分に着く。外はもう暗い。新潟とはどんな街なのか。新潟へ近づくにつれ光が多くなる。実際に新潟につき、駅構内も清潔で広く、駅周辺も整備されていて、いい感じだ。さぁ、今日泊まるホテルを探さなければならない。予約はしてあるもの、そのホテルはどこにあるのか。駅周辺マップで調べて、いざ歩き始める。しかし、どうも見つからない。うーん、どうしたものか。もう一度駅に戻って確認するか。彼女はもっと先にあるんだよと言っているが、どうも違う。感覚的に考えてもそんなに遠くはないはずだ。すこし来た道を戻り、道を曲がり進んでみる。多分こっちだよといいながら、彼女を誘導する。多分あの緑の看板がそうなんだよ、と遠くに見える緑色に光る看板をさしていった。歩いていくと、本当にその看板がそのホテルだったのだ。自分でもびっくりだ。さぁ、ホテルにチェックイン。ホテルは、以前はなにかの寮として使われていたのか、建物のつくり上、ホテルらしくはない。部屋にお風呂はなく、大浴場が10階にある。しかも露天風呂などもあったりと、意味不明なホテルだ。実際、住み込む予備校生や長期滞在のビジネスマンも多くいるらしい。
一度、ホテルでくつろぎ、夕飯のために外に出る。繁華街のようなところを歩いてみたが、歌舞伎町にいるようなキャッチの若者たちが群がっていて、雰囲気はよろしくない。彼女も怖がるので、場所を変え、結局久しく行ったことがないから、という彼女のために吉野家に落ち着いた。たしかに安上がりでいいのだが。帰りにローソンで、お酒やデザートを買って、ホテルの部屋で2次会をした。
午前中は、男鹿で観光、午後は秋田からいっきに新潟まで移動。まったく異なる行動がまたこの一日を面白くさせた。さて、明日は旅行最終日だ。どんなことが起こるのか。なにも起こらず旅を締めくくるのか。旅の終わりに近づくにつれ、彼女は感傷的になりがちだ。すこし濃すぎる旅だったかもしれない。
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